巨大企業の闇1 Apple(1)日本の下請け企業を特許権侵害・詐欺・強要で食い物にするブラック企業 

記事 宮武嶺
2014年12月23日 07:54
(元記事)

1 大巨人とダビデの世紀の一戦勃発す

さて、あらためて言うまでもなく、故スティーブ・ジョブズが創始者として有名なApple社の製品で、スマートフォンとして世界で最も人気が高くまた売れているスマートフォンであるiPhoneですが、その部品のサプライヤー=供給者である日本の中小企業が、時価総額で世界1の巨大多国籍企業を訴えたのです。

そして、これは、世界にその影響が派生する大事件と言われているのです。

 株式会社島野製作所という日本の会社が、2014年8月1日付でアップル・インコーポレイティド(以下「アップル」)に対し、独占禁止法違反(請求内容:リベート支払等に関する損害賠償請求)等を理由とする訴訟を提起するとともに、同月6日付けで特許権侵害(一部のアップル製品についての販売差止及び損害賠償請求)について訴訟を提起したと発表したのです。


2 島野とアップルとの関係

この島野製作所は、アップル社の製品の電源アダプタ接合部分に使われるピンのサプライヤーです。(ちなみに、ピンとは、安全ピンのあのピンのことで、物を固定するために使う針状の道具です。)  島野は、東京都内にある部品メーカーで、社員数20人と規模は大きくないのですが、米半導体大手インテルや韓国サムスン電子などを取引先に持ち、その技術力は高い評価を受けている、業界では有名な企業なのだそうです。

 逆に、アップルは自社工場を持たず、全世界に厳格な審査で選んだ島野のようなサプライヤーを持ち、それらの結晶体として、斬新な製品を世に送り出していることで知られています。

その島野は、今回の訴訟について、2014年9月12日、以下のようなコメントをしています。 「当社は、アップルのサプライヤーとして、約9年間、アップルと継続的取引を行って参りました。しかしながら、これまでの取引において、看過できない行為があったため、訴訟を提起したものであります」


3 アップルの横暴

島野によると、島野はアップルから依頼を受けて新製品用のピンを開発しました。また、島野はアップルからそのピンの増産を何度も求められ、設備投資等をして量産体制に入りました。

ところが、それから約半年後に突如、アップルからのピンの発注量が激減しました。 実はこのとき、アップルは島野との“合意”を無視するかたちで、しかも、半年間に得た島野の技術を密かに伝えた別のサプライヤーに代替ピンを製造させていたのです。

つまり、これは島野の特許権を侵害したものでした。
島野はそんなこととはまだ知らず、アップルに取引再開を求めましたが、逆にアップルは今後の取り引きについて値下げを要求してきました。

アップルの下請けであり、すでに多額の投資をしてしまっている島野は、やむなくその条件を飲みました。ところが、アップルはさらにリベートの支払いも必要だと言ってきたのです。

 詳しくいうと、島野がすでに納品した過去のピンについてまで、アップルが持つ在庫ピンの購入時価格と島野が今回値下げしたピン価格の差額分に、在庫ピンの数量をかけて算出した約159万ドル(当時、約1億6000万円)を払えというのです。

つまり、過去の納品分も全部安い価格だったのと同じにするというわけです。それでも、島野は止むを得ず言われるまま、その金額をアップルに支払いました。

ところが、アップルは別の会社への受注を継続したため、島野への受注は増えませんでした。


4 島野、アップルとの裁判に踏み込む

そこで、島野はとうとう堪忍袋の尾が切れて、大アップルと全面的にあらそうことにしました。

すなわち、アップル相手に訴訟を提起し、アップルがやったことは決済が終わった売却済み製品の値下げの強要に他ならず、不当なリベートの要求であり、これは独占禁止法違反で禁じる「優越的地位の乱用」にあたると主張したのです。

また、特許権侵害の対象であるアップル製品の電源アダプタと、それが同梱されているノートパソコンであるMacBook ProとMacBook Airの日本での販売差し止めも請求しています。

5 超えてはいけない線を越えてしまったアップル
「リベートを払ってもらう必要がある」「159万ドルを6月第1週までにアップルへ支払ってほしい」「以下の口座に送金してください。バンク・オブ・アメリカの……」

裁判の中で、原告島野製作所から、被告アップルの購買担当者が書いたという、生々しいやり取りを記したメールの文面が訴訟の証拠資料として提出されています。

 島野は「物事には越えてはならない一線がある。約束を破ったことや不当なリベートといったアンフェアにはどうしてもノーと言わなければならない」

 「アップルは取引開始当時とは変わってしまった。企業は大きくなったが、人や内部管理体制、コンプライアンス(法令順守)が追いついていないのではないか」  「長年のパートナーを訴えるのは心苦しいが、アンフェアは正すべき」

 「この訴訟が、優れた技術を持つ日本の部品メーカーが正当な利益を受ける端緒となることを期待する」と話しています。

そして、島野は、和解はせず、あくまで自社の主張を伝えていく考えだ。欧米での提訴も検討するとしています。